「山薬」とは? 一般的説明

少しばかり込み入ったお話になりますが、サプリメント業界を含む食品製造・販売業界においては、ヤマイモ、山芋といった表現は使用可能ですが、「生薬」の表現は、製薬・薬品業界のみに使用が許されている表現とされています。これは、薬機法上の規定に基づいています。これは、サプリメントは薬でなく、また薬と誤解を与える可能性がある表現は、避けるべきとの考え方に由来するものと思われます。

 

従って、ここでは、「生薬」を、一般的な意味合いでご説明することといたします。

ヤマイモは、日本における医薬品に関する品質規格書である日本薬局方では、「山薬」として収録されています。山薬は、そもそもナガイモの漢名ですが、ヤマイモや、ナガイモの根茎の外皮をよく取り除いて乾燥させた生薬が、通常「山薬」と呼ばれています。

 

「山薬」は、昔から滋養強壮,止渇(しかつ),止瀉薬(ししゃやく)として効果があるとされ、胃腸虚弱、食欲不振、身体疲労、腸炎、夜尿、寝汗などに応用されてきました。成分としては、デンプン、アミノ酸、糖たんぱく質、コリン、アラントイン、ジアスターゼ、カタラーゼなどを含んでいます。

日本漢方生薬製剤協会によれば、「山薬」には、男性ホルモン様作用、SOD様作用、免疫賦活作用、抗炎症作用、血糖降下作用等の薬理作用があると述べられています。

漢方処方として、多くの漢方薬に「山薬」は使われており、例えば、八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸、啓脾湯、参苓白朮散等には、重要な成分として「山薬」が含まれています。

  

 

ジオスゲニンの効能

ジオスゲニンの新たな効能の発見

ヤマイモは、古来より世界各地で長年にわたり食されています。現在では、ヤマイモ成分について多くのことが科学的に説明できるようになりました。

ヤマイモに含まれる成分の一つである「ジオスゲニン」は、食物アレルギー改善、糖尿病性神経障害緩和効能、抗がん作用、抗肥満作用があることが動物モデルにおける実験では報告されており、今後の、人による臨床試験が待たれています。

富山大学では、富山の薬売り発祥の時代から脈々として受け継がれてきた“生薬”に関する知識と経験を活かし、かつ最先端科学を駆使して、高齢化社会になって直面しつつある、認知症などの精神疾患、がん、免疫疾患など、大きな社会問題になってきた諸課題に取り組んでいます。

富山大学和漢医薬学総合研究所東田千尋教授は20年以上に渡り脳神経の活性を研究してきました。その成果の一つとして、ヤマイモ成分「ジオスゲニン」の新たな効能を発見しました。アルツハイマー病モデルマウス脳内で損傷した神経回路網を再構築する作用です。通常、脳の神経細胞から伸びる突起(軸索・樹状突起)は年齢を重ねるとともに、縮んだり、消滅したりしてしまいます。その結果、認知力や記憶力が衰えていきます。その軸索や樹状突起を再び伸ばし、神経回路をつなぎ直す作用を確認いたしました。

今回発見したジオスゲニンの特徴は、
(1)正常マウスの記憶向上
(2)損傷した神経回路の機能的回復
(3)アミロイドβとリン酸化タウの減少


をもたらすことです。特に軸索の萎縮が起きた細胞に作用して、軸索の萎縮を形態的・機能的に修復させることで、記憶能力を始めとする認知機能の回復を実現する点は、認知症発症後からの回復さえも期待できる非常に有効な効果です(完全に死滅した細胞を蘇生させるものではありません)。ジオスゲニンが作用する受容体(刺激や情報を受け取る部分)の作用機序も明確になりました。これらの成果は、特許として出願、登録されています。(特許登録番号:第5789339、第6267160号、第6165323号)

ジオスゲニンの新たな効能
ジオスゲニンの新たな効能
ジオスゲニンによる神経細胞の軸索・樹状突起の変化
マウス(小型ネズミ)の大脳皮質の神経細胞

当社発明の主な特長

  • アルツハイマー病等の神経変性疾患に対し、神経回路網の修復に基づく認知機能改善効果
  • 正常な脳機能に対しても、さらなる記憶力増強作用
  • アルツハイマー病等の発症・進行の原因物質とされる、アミロイドβと過剰リン酸化タウ蛋白の減少
  • ジオスゲニンの高安全性
  • 特別な処方による微量経口投与により上述の効果の発現
  • 薬理効果の作用機序の解明(人の脳にも含まれるTarget Receptorの特定)

  

  

研究論文

1) Yang X, Tohda C.
Diosgenin restores Aβ-induced axonal degeneration by reducing the expression of heat shock cognate 70 (HSC70).
Scientific Reports, (2018) 8(1), 11707. doi: 10.1038/s41598-018-30102-8.

2) Yang X, Tohda C.
Heat Shock Cognate 70 inhibitor, VER-155008, reduces memory deficits and axonal degeneration in a mouse model of Alzheimer’s disease.
Frontiers in Pharmacology, (2018) 9, 48. doi: 10.3389/fphar.2018.00048.

3) Tohda C, Yang X, Matsui M, Inada Y, Kadomoto E, Nakada S, Watari H, Shibahara N.
Diosgenin-Rich Yam Extract Enhances Cognitive Function: A Placebo-Controlled, Randomized, Double-Blind, Crossover Study of Healthy Adults.
Nutrients, (2017) 9(10), 1160. doi:10.3390/nu9101160

4) Tohda C, Lee Y-A, Goto Y, Nemere I.
Diosgenin-induced cognitive enhancement in normal mice is mediated by 1,25D3-MARRS.
Scientific Reports, (2013) Dec 2;3:3395. doi: 10.1038/srep03395.

5) Tohda C, Urano T, Umezaki M, Nemere I, Kuboyama T.
Diosgenin is an exogenous activator of 1,25D3-MARRS/Pdia3/ERp57 and improves Alzheimer’s disease pathologies in 5XFAD mice.
Scientific Reports, (2012) 2, 535. DOI:10.1038/srep00535

  

  

ジオスゲニン(Diosgenin)とは →